読売Bizフォーラム中部:講演概要
「私流」お城めぐりと鉄旅の楽しみ方
村井 美樹 氏 俳優・タレント
俳優やタレントとして知られる村井美樹さんが「『私流』お城めぐりと鉄旅の楽しみ方」と題して、65人を前に講演しました。
城の周囲には外堀などのまっすぐな空間があり、線路を敷くのに適していたとして「城と鉄道は親和性が高い」と力説しました。1976年まで名古屋城の外堀を走っていた名鉄瀬戸線の廃線跡は景観が美しく、「一度は訪れておきたい場所」と話しました。
城にはまったきっかけは犬山城といい、天守閣に登ると360度見渡せて「夕日が沈む風景がすごく美しい」と話しました。天守から名鉄電車が走る様子を見られる点も醍醐味といいます。
犬山城下町が住民や地元企業らの努力で再生した歴史にも触れました。現在はオーバーツーリズムが課題とし、「人を集めるだけではなく、より犬山らしさを追求することが大切ではないか」と提案しました。
講演の概要は以下の通りです。
■100城めぐる
これまでに100城をめぐったほどの城好きだ。城を紹介するテレビ番組に出演する際は、事前にプライベートで取材に行って、訪れて感じたことをコメントできるようにしている。鉄道に乗って城を訪れることが多く、ローカル線を使ったときはのんびりした車窓の景色に癒やされている。
城は交通の要所にあるので、新幹線や在来線の車窓からカメラなどで撮影するのも楽しみの一つだ。ただ、新幹線の車窓から名古屋城を捉えようとしても、ビルの隙間から一瞬のぞくだけなので、まだ成功したことがない。
■名古屋城の豪華さ
名古屋城といえば、豪華絢爛(けんらん)な本丸御殿が有名だ。空襲で焼失したが、約150億円もの費用と10年の歳月をかけて復元された。天井に描かれた絵やふすまなどは取り外され、別の場所に大切に保管されて戦火を免れており、図面なども残されているので復元できた。見ていない人は人生を損しているのでぜひ見てほしい。
ヒョウや虎がにらみをきかせるふすま絵や、極彩色で彩られた欄間など、徳川家の威厳を示す豪華な装飾に次々と出会える。欄間の彫刻はとても緻密(ちみつ)で、これを現代によみがえらせた職人の技にも注目だ。
くぎを隠すための「くぎ隠し」には、ブドウとリスがあしらわれている。「武道に律する」という意味のだじゃれだ。遊び心が感じられ、面白い。
天守閣の金のしゃちほこも、言わずと知れた名古屋城の名物だ。想像上の生き物だが、口から水を吐くので、火事から城を守るために付けられたとされている。
城の周りは外堀などのまっすぐな空間があり、線路を敷くのに適している。そのため城と鉄道は親和性が高く、セットで楽しめる。名古屋城の外堀は1976年まで名鉄瀬戸線が通っていた。廃線跡は現在も緑豊かで蛍の名所として親しまれている。一度は訪れておきたい場所だ。
ちなみに、水戸城(水戸市)の堀は幅40メートル、深さ22メートルにも及び、堀底にはJR水郡線が走っている。中世の遺構を現代の鉄道が通る「ミスマッチ感」が大きな魅力だ。福山城(広島県福山市)も、堀に線路を通している。
■「初恋」犬山城
犬山城(愛知県犬山市)は、城にはまったきっかけとなった、いわば「初恋」の城だ。正面から見るとかわいらしい印象だが、後ろ側から見ると、木曽川の断崖にそびえ立ち、全く違う表情となる。このギャップに魅了された。
天守閣に登ると、360度の大パノラマを堪能できる。赤い名鉄電車が走っていく様子が楽しく、夕日が沈む風景は美しい。つい長居してしまう魅力がある。
現在は若者らが集まる城下町にも、物語がある。かつては寂れていたが、2000年頃から住民や地元企業、行政などが協力して町おこしを始めた。空き家を改装してテナントとして活用したり、電線の地中化を進めたりした結果、情緒豊かな景観が出来上がった。ご当地グルメとして田楽などの「串グルメ」を打ち出したことも奏功し、にぎわいが生まれた。
外国人観光客にも人気となったが、現在はオーバーツーリズムが課題となっている。人を集めるだけでなく、より犬山らしさを追求することが必要ではないか。
講師プロフィール
-
村井 美樹 氏 俳優・タレント
1979年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2002年ミス早稲田でグランプリを受賞後、NHKドラマ『夏樹静子の量刑~脅された法廷~』で女優デビュー。その後、テレビ朝日「Qさま!」や、NHK「日本の最強城スペシャル」、テレビ東京「ローカル路線バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅」など多くのクイズ番組や歴史番組で知性派タレントとして活躍中。また漢字検定1級、博物館学芸員資格、英検2級、世界遺産検定2級なども所持している。