読売Bizフォーラム中部講演概要

今後の日本のあり方について

小林 鷹之  氏 衆議院議員

開催日2025年10月6日 (月)
会場 コートヤード・バイ・マリオット名古屋「セントラルボールルーム」

 中部経済の未来と地域作りを考える「読売Biz(ビズ)フォーラム中部」が6日、名古屋市内で開かれ、自民党政調会長への起用が固まった小林鷹之・元経済安全保障相が約85人を前に講演し、高市総裁の下で産業政策を推進したいと抱負を語りました。

 小林氏は、高市氏について、「これまでの3度の総裁選で『日本列島を、強く豊かに』というメッセージがぶれていない。このメッセージを心から共有するひとりとして支えていきたい」と述べました。

 今後の政策課題に関しては、「重要なのは、経済成長力を底上げすることだ。技術を基点にして強い経済を作る。大胆に投資をして、競争力のある産業拠点を全国各地に作りたい」と語りました。具体的な先行事例として、熊本県や北海道の半導体生産拠点を挙げました。

■高市総裁支える  
 自民党の立党70年で初の女性総裁誕生という瞬間に、候補者の一人として立ち会えたことは非常にうれしかった。これからも、(総裁選に)立候補した4人の候補者と力を合わせて自民党を盛り上げていきたい。
 高市総裁はこれまでの3度の総裁選で、「日本列島を、強く豊かに」というメッセージがぶれていない。このメッセージを心から共有しているので、党所属の一国会議員として、高市総裁を支えていきたい

■少数与党  
 昨年、石破政権になってすぐに(衆院の)解散総選挙で少数与党になった。そういう状況になって政治が機能せず、政策のスピードが落ちた。野党と協議することで自民党として軸が決まらず、自民党らしくない政策に押し込まれていく状況が続いた。
 政権基盤が弱くなれば強い外交力が発揮できない。この1年間に国際社会の中で、日本のステータスが上がったとは思えなかった。少数与党になってしまったために、内政も外交も石破カラーを出すことができず、政治が停滞してしまった。
 これから少数与党は厳しい道のりだが、自民党一丸となって国家、国民のために働いていく。

■経済成長力底上げ  
 私は世界をリードする日本を作るという思いで政治家をやっている。そのために何をするかというと、国力を高めるということだ。経済と安全保障、社会に対して付加価値を生み出すイノベーション、そして人づくりである教育。この四つをバランスよく拡充していくことが、国力を高める。
 国家運営をするにあたっては、三つの柱がある。一つは力強く成長していく経済というものがなければいけない。二つ目は戦略的な外交と自らの手で国を守り切るという国防だ。三つ目は教育、人づくりだ。
 重要なのは、経済成長力を底上げすることだ。日本は資源の乏しい国だから、成長力の源泉は科学技術だ。技術を基点にして強い経済を作る。強い経済と技術があれば、それを裏付けとして国を守る力が高まる。
 経済力と防衛力があれば、それを裏付けとして国際社会の中で発言力が高まるので、外交力が高まる。外交力が高まると、国益にかなう形での国際ルール形成が、より主体的に可能になる。すると日本の経済力が高まる。
 技術を起点にして、経済、防衛、外交、経済という循環を回していくことを今、政治がやるべきだ。

■国は大胆に投資を  
 そのためには、国は大胆に投資をすることだ。競争力のある産業拠点を全国各地につくっていきたい。この「令和の殖産興業」を高市総裁の下で思い切って進めていきたい。
 重要なことは、戦略産業を何にするのか、国としての方針をしっかり決めることだ。優先順位が高いのは、情報通信とエネルギーだ。これからの社会の中で、全ての産業の基盤になってくるのは、情報通信とエネルギーだからだ。
 例えば、情報通信というと、(米国の)グーグルやアマゾン、マイクロソフトに匹敵するような企業は日本にはない。でも、今は米国の巨大企業に匹敵しなくても、日本にやる気のある人たちが出てきているのであれば、国が思い切って応援すればいい。失敗するかもしれないけれども、ある程度のところまでいくかもしれない。それならば、国がリスクを取るべきだ。

◎質疑応答 
 ――日本の外交安全保障で「世界をリードする日本」というのは、具体的にどのように考えているのか。安倍元首相の路線は米国を支えながら日本の国力を高めていくというものだったと思うが、その点をどう考えるのか。
 外交の方針としては、日米同盟が当面、基軸であるということは変わらない。ただ、これは米国の政策によって変わりうる。日米同盟が米国にとって重要性を持ち続けるように、日本が動かなければならない。
 アジアから米国の影響力が減っていき、消えていく世界で、どうやって秩序を作っていくのか。いろいろな枠組みを重層的に重ねていくことが必要だ。

 ――小林さんにとっての国益とは何か。
 私の国益は三つあって、一番重要な中核的な国益は国家の主権と独立、国民の生命と財産を守ることだ。二つ目は、経済的な繁栄を持続させていくこと。三つ目は、国益にかなう国際秩序を主体的に関与して作っていく。この三つが私にとっての国益だ。

講師プロフィール

  • 小林 鷹之  氏 衆議院議員

     1999年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現・財務省)入省、2003年ハーバード大学院修了。12年第46回衆議院議員総選挙で初当選(現在5期)。16年防衛大臣政務官、21年経済安全保障担当大臣、内閣府特命担当大臣(科学技術・宇宙)。現在、衆議院財務金融委員会筆頭理事等、党経済安全保障推進本部長、日・グローバルサウス連携本部長等。著書「宇宙ビジネス新時代! 解説『宇宙資源法』」(2022年、第一法規株式会社)、「世界をリードする国へ」(2024年、PHP研究所)