読売ビジネスフォーラム(北海道)講演概要

「指導者とは」

アレックス・ラミレス  氏 前横浜DeNAベイスターズ監督

開催日2021年10月5日 (火)
会場 札幌グランドホテル/正午~

 プロ野球・横浜DeNAベイスターズ前監督のアレックス・ラミレスさん(47)は自身の選手と監督としての経験から理想のリーダー像を語り、「良いリーダーに求められるのは、共感力を持ち、人の話をしっかり聞くことができることだ」と語った。

 ベネズエラ出身のラミレスさんは、2001年にヤクルトスワローズに入団し、読売ジャイアンツ、DeNAに移籍。外国出身選手として初の通算2000本安打を達成するなど強打者として活躍した。15年10月に監督に就任すると、低迷していたDeNAを2年目で日本シリーズに導いた。19年に日本国籍を取得し、昨年監督を退任した。

 ラミレスさんは講演で、準備の大切さを何度も強調。「自分が選手として成功できたのは、人より才能があったからではなく、(相手の分析などの)準備が良かったからだ」と話した。

 監督就任後は、「選手時代よりも勉強しなければならないことが増えた」。二軍を含めて70人以上いる選手たち一人一人の長所や短所を把握し、それぞれの力を伸ばせるような助言をすることに努めたという。

 リーダーの素質がある若手として、DeNAの佐野恵太選手の名を挙げた。いつも早めに球場に来て準備し、チームメートを励ます姿を見て、監督のラミレスさんは迷わず4番・主将に抜てきしたと明かした。

 指導者の条件を、〈1〉人を励ます〈2〉皆のロールモデル(手本)になる〈3〉常に前向きに考える〈4〉人の話をしっかり聞く〈5〉好不調にかかわらず良い態度を保つ〈6〉人に意欲を与える〈7〉自らを律する〈8〉自信を持つ〈9〉周りに好影響を与える〈10〉長期・短期の将来展望を持つ――とまとめ、「それが私のなりたいリーダー像だ」と結んだ。

 質疑応答では、会場からの「すごいと思った監督は誰か」の質問に「巨人にいた4年間で、原(辰徳)さんには多くのことを学んだ。戦略やリーダーシップの面では、選手として仕えた4人の監督の中でナンバーワンだ」と答えた。

◆講演のポイント

▽良いリーダーは人を「引っ張る」

「ああしろ、こうしろ」と言うのではなく、チームを勇気づけ、前向きな言葉をかけられるのが良い指導者だ

▽「I」ではなく「we」

リーダーは自分が活躍したとしても、「私(I)のおかげで試合に勝てた」と思うのではなく、「私たち(we)がチームとして勝ったんだ」と思える

▽共感力を持つ

指導者には人に対するエンパシー(共感力)が必要。助言を必要としている部下に「大丈夫かい?今はつらい時だけれど、これから良くなるよ」と手を差し伸べられることが大事だ

講師プロフィール

  • アレックス・ラミレス  氏 前横浜DeNAベイスターズ監督

    1974年 ベネズエラ生まれ。

    米大リーグのインディアンス、パイレーツを経て、2001 年にヤクルトスワローズに入団。パワーヒッターとして同年のヤクルトのリーグ優勝と日本一に貢献した。

     08 年読売ジャイアンツに移籍、数々のタイトルを手にした。 12 年から横浜 DeNAベイスターズ に移籍し、 13 年には外国人選手として初となる NPB 通算 2000 安打を達成、唯一の名球会入りとなる。

    NPB通算で手にしたタイトルは首位打者 1 回、本塁打王 2回、打点王 4 回。

     16 年から20年まで DeNA 監督を務めた。 2019 年 に日本国籍を取得。