読売ビジネスフォーラム(北海道)講演概要

ダイバーシティ&インクルージョン~企業と社会の可能性を拓く~

及川 美紀  氏 株式会社ポーラ代表取締役社長

開催日2022年8月5日 (金)
会場 札幌パークホテル(札幌市中央区南10条西3丁目)/正午〜

 大手化粧品会社「ポーラ」の及川美紀社長が「ダイバーシティ&インクルージョン~企業と社会の可能性を拓く~」と題し、約140人を前に講演した。

 2年前に同社初の女性社長となった及川氏は、女性の社会進出や多様性社会の実現のために企業が果たす役割について語り、「全ての社員が能力を発揮できる環境を作ることは企業の責任だ」と訴えた。

 女性管理職登用を進めるためには「本人の意識だけでなく、挑戦を受け入れ、可能性に投資することが大切だ」と指摘。女性登用を進めると、男性社員も含めた一人ひとりの能力を最大化できて、今まで見えなかった視点が加わり、様々な課題を解決できると強調した。

 及川氏は宮城県石巻市生まれ。東京女子大卒業後、1991年にポーラ化粧品本舗(現・ポーラ)に入社した。商品企画部長、商品企画などを担当する取締役を経て、2020年に社長に就いた。社長への登用の背景を「挑戦させてくれ、それをサポートしてくれる土壌が会社にあったから」と説明。可能性のある人にどれだけのチャンスを与えられるかが企業にとって重要になると強調した。

 同社の女性管理職の割合は3割。女性に昇進の機会を与えることで「男女が互いに切磋琢磨(せっさたくま)するようになり、それぞれの能力が最大化される」と指摘した。女性だけでなく、障害者も含めたマイノリティーの人々が活躍できる社会になるためには企業の役割が大事だという。

 また、女性への偏見をなくす重要性を強調。「『彼女は子育て中だから』という理由でプロジェクトから外されてしまうケースがある。可能性にふたがされ、芽が摘まれてしまう」と現状を批判した。男性の育休取得についても、女性の苦労が分かることに加え、部下に一時的に仕事を任せることになるため、「成長の機会が与えられる。休むことを怖がらないのが大事」と男性の意識改革を訴えた。

 女性の管理職登用などを進めた結果、ポーラの就職人気ランキングが上がったことに触れながら、「今の世代は家族をチームとして捉え、長く共働きをして、ファミリーで世帯収入を上げたいと考えている」と話し、社員が長く働きやすい環境をつくるために企業は柔軟に対応すべきだと語った。

◆講演のポイント

▽なぜ社長になれたのか

会社には、社員を挑戦させ、それをサポートする土壌があったから。可能性のある人にどれだけチャンスを与えることができるかが、会社として大事だ

▽企業が女性活躍促進に取り組む理由

女性の働く環境を整備することで、公正な競争が生まれ、男性の能力も上がる。女性だけでなく障害者らマイノリティーの人々も実力を発揮できるようになる

▽多様性社会の実現に向けて

上司が「子育て中なので難しそう」といった女性への偏見で、可能性の芽を摘まない。男性が育休を取ることで女性の苦労が分かり、休むことは部下の成長にもつながる

 

講師プロフィール

  • 及川 美紀  氏 株式会社ポーラ代表取締役社長

    1969年、宮城県生まれ。東京女子大学卒。1991年、ポーラ化粧品本舗(現株式会社ポーラ)入社。

    美容スタッフ・ショップの経営をサポートする埼玉エリアマネージャーを経て、2009年より商品企画部長に。2012年に執行役員(商品企画・宣伝担当)、2014年に取締役就任(商品企画・宣伝・美容研究・デザイン研究担当)。

    2020年1月から同社初の女性代表取締役社長を務める。