読売ビジネスフォーラム(北海道)講演概要

気象・気候ビジネスへの挑戦

草開 千仁  氏 株式会社ウェザーニューズ 代表取締役社長 最高経営責任者

開催日2023年12月8日 (金)
会場 札幌グランドホテル(札幌市中央区北1条西4丁目)/正午~

 世界最大級の民間気象会社「ウェザーニューズ」の草開千仁(くさびらき・ちひと)社長(58)は、同社の企業向けビジネスとして、気象予測を活用し、安全で経済的な船舶の航行ルートや、店の商品需要の見通しなどを提示している実例を紹介。気候変動対策として、工場の自然災害のリスクや、穀物収量などに関する将来予測を示すサービスにも取り組んでいるとした。

 同社は、スマートフォンアプリなどによる精度の高い天気情報の提供で知られている。現在、運輸、スポーツなど40を超える市場に展開する同社のサービスと、それらを生み出す原動力を詳しく語り、参加した120人をひきつけた。

 草開氏はまず、企業向けの主なサービスの実例を話した。

 「航海気象」では、外航の貨物船に対して、積み荷によって異なる、安全で経済的な航路をそれぞれ提示。使用燃料を抑え、温室効果ガス排出抑制にもつながっているという。また、天候による食品などの需要予測を店ごとに示している。このほか天候が戦術に影響するスポーツ分野ではラグビーの日本代表、箱根駅伝に出場した大学チームに情報提供しサポートした例もある。

 企業や個人に天候だけでなく「対応策」まで示す事業展開が国の気象庁との違いといい、草開氏は「気象庁は『みんなの気象台』、ウェザーニューズは『あなたの気象台』」と説明した。

 講演で重点にしたのが、事業を生む際の同社の考え方だ。「How wonderful(実現できればどんなに素晴らしいだろう)」が最優先だといい、海運で欧州から日本までの距離を大幅に縮める「北極海航路」の活用に向け、北極海の氷を観測する超小型衛星を打ち上げた実例を挙げた。

 また、「どんなにいい事業でも、社員が同じ方向を向いて取り組まなければ発展できない」と強調。大切にしている企業文化として、失敗を恐れずに率先して取り組む「イニシアチブ」、言いにくいことも言い合える「相互信頼」と、チームワークを意識する「共同体の一員としての自己認識」の三つを挙げた。

 講演の最後には、世界的な気候変動について「異常気象を超えた『極端気象』が起きている」と説明。海運でのCO2排出量削減などに貢献することを指す「緩和」、工場などの自然災害リスクを回避軽減するといった「適応」の両面で事業を推進していくとした。

◆講演のポイント

▽気象情報に加え、企業や個人に「対応策」まで提供するのが気象庁との違い

▽気候変動対策は、温室効果ガス排出抑制に貢献する「緩和」と自然災害などのリスクを回避する「適応」の両面で推進する

▽ビジネスを進めるときには「How wonderful」(実現できればどんなに素晴らしいだろう)を最優先に考える

▽大切にしている企業文化は「イニシアチブ」「相互信頼」「共同体の一員としての自己認識」

講師プロフィール

  • 草開 千仁  氏 株式会社ウェザーニューズ 代表取締役社長 最高経営責任者

    1965年東京都生まれ。

    1987年青山学院大学理工学部物理学科を卒業後、株式会社ウェザーニューズに入社。

    営業本部CSS事業部長、営業総本部航空事業部長、防災・航空事業本部長などを経て、1996年に取締役就任。1997年に常務取締役、1999年に代表取締役副社長を経て、2006年に代表取締役社長就任。2016年より現職。