読売ビジネスフォーラム(北海道)講演概要

夢と冒険 モンベル7つのミッション

辰野 勇  氏 株式会社モンベル 代表取締役会長

開催日2023年8月4日 (金)
会場 札幌プリンスホテル(札幌市中央区南2西11)/正午〜

 アウトドア用品大手「モンベル」(本社・大阪市)創業者の辰野勇会長が「夢と冒険 モンベル7つのミッション」と題し、登山用品メーカー創業をかなえるまでの軌跡やアウトドアを基軸とした「7つのミッション」で地域活性化に取り組む経営などについて、熱く語った。

 辰野会長は堺市(大阪府)出身。高校1年生だった16歳の時、スイス・アイガー北壁の初登頂に成功したハインリヒ・ハラー(オーストリア)の登攀記(とはんき)「白い蜘蛛(くも)」を教科書で読み、「あわや遭難というハラハラドキドキの内容」に心躍らせた。その時、山男への憧れもあって、「アイガー北壁を登る」「登山を生業(なりわい)にする」という二つの目標を立てたという。

 1969年、当時世界最年少の21歳で、アイガー北壁の登攀に仲間と成功。その後も川下りなどで命がけの冒険をした。その経験から、「先が見えない道を進む時はあえて困難な方を選ぶ」という決断力や、「今という一瞬を大切に生きる」との考え方が培われたという。

 モンベルの創業は1975年。その前に商社で繊維の営業をしていた経験からテントなどの素材やビジネスの知識が身についており、資本金は持っていなかったが、「28歳で独立」とした目標に沿って会社の設立に踏み切ったという。

 講演の後半は、モンベルが社会へ果たす使命として掲げる「7つのミッション」と、この基準に沿って国内の自治体や企業など130か所以上と包括連携協定を結んでいることを説明した。道内自治体では、芽室町や小清水町など11市町(7月26日現在)と締結しており、このうち、人口約2300人の南富良野町に昨年、モンベルの道内最大規模の店舗を開店したことも挙げた。こうした地方店舗が、地域活性化と同時に売り上げを下支えしている相乗効果を紹介した。

 また、小清水町には、コインランドリーを展開する会社と共同開発した撥水(はっすい)機能付きのランドリーを設置し、「多くの利用者が訪れている」と語った。

◆モンベルの「7つのミッション」(モンベルのホームーページから)

1.自然環境保全意識の向上

2.野外活動を通じて子供たちの生きる力を育む

3.健康寿命の増進

4.自然災害への対応力

5.エコツーリズムを通じた地域経済活性

6.1次産業(農林水産業)への支援

7.高齢者・障害者のバリアフリー実現

講師プロフィール

  • 辰野 勇  氏 株式会社モンベル 代表取締役会長

    1947年大阪府生まれ。少年時代から山一筋の青春を過ごし、登山に関連したビジネスを興す夢を抱き、1969年にはアイガー北壁日本人第二登を果たすなど、名実ともに日本のトップクライマーとして活躍する。

    1975年に株式会社モンベルを設立。社業の一方、1991年、日本で初めての身障者カヌー大会「パラマウント・チャレンジカヌー」をスタートさせるなど、社会活動にも力を注いできた。

    近年では、京都大学特任教授やびわこ成蹊スポーツ大学客員教授、天理大学客員教授など、野外教育の分野においても活動する。