読売ビジネスフォーラム(北海道)講演概要

心で走る~パリ五輪 マラソン・長距離の見どころ~

瀬古 利彦  氏 (公財)日本陸上競技連盟・マラソンリーダー

近藤 雄二 読売新聞社 編集委員(コーディネーター)

開催日2024年7月4日 (木)
会場 札幌プリンスホテル(札幌市中央区南2西11)/正午〜

 日本の陸上長距離界をリードしてきた元マラソン選手で日本陸上競技連盟マラソンリーダーの瀬古利彦さん(67)が「心で走る~パリ五輪 マラソン・長距離の見どころ~」と題して講演した。

 大学駅伝の名監督らのエピソードや、目前に迫ったパリ五輪での「メダル予想」などについて1時間余り熱く語り、集まった約140人の参加者をひきつけた。

 瀬古さんと同じ早大出身で、箱根駅伝に3度出場した読売新聞の近藤雄二編集委員(56)がコーディネーターを務めた。2人は早大のコーチ、選手という師弟関係にあり、和やかに対談する形で進められた。

 前半は名指導者たちの「すごさ」がテーマ。瀬古さんは、早大入学時から指導を受けた中村清監督の育成にかける情熱が「マグマの塊のようだった」と振り返り、千葉の海岸で「これを食えば世界一になれるなら、私は食える」と言って砂を食べてしまったエピソードを披露した。

 また、駒大の大八木弘明総監督を「1日24時間を選手のために使っている」、青山学院大の原晋監督を「365日、朝練習で選手を見ている」と、独自の視点で評価した。

 瀬古さんは現役時代、ボストンマラソン、福岡国際マラソンなどを制した。近藤編集委員は「コーチとしての瀬古さんも、弱い早大を3年で箱根の優勝に導いた手腕がすごかった」と紹介すると、瀬古さんは「どう教えていいか分からず、中村さんのまねをした」と恩師に感謝していた。

 後半はパリ五輪の展望を語り合った。マラソンは行きと帰りの2度、急坂を乗り越えるタフなコース。瀬古さんは、女子日本記録保持者の前田穂南選手を「暑さにも山坂にも強い。メダル獲得の可能性がある」とした上で、「みんなが様子を見ている15キロあたりから逃げると面白い」との見方を示した。

 一山麻緒選手、鈴木優花選手の活躍も望めるとし、男子では日本代表3人の中で赤崎暁選手の状態が最も良く、「一番期待している」と述べた。

 会場の参加者からは、五輪代表を「一発勝負」で決めるマラソングランドチャンピオンシップ (MGC)を導入した日本陸連の決断について、瀬古さんにリーダーの心構えを聞く質問などが出ていた。

◆この日の瀬古さん語録

▽「泥臭い練習をしている選手は最後に必ず結果を出す」

昭和の頃、練習で宗兄弟は5000メートル走を8本、私も90キロをノンストップで走った。無駄と思われるかもしれないが、今の選手でも泥臭いトレーニングをしている人はレースで結果を出している

▽「命をかけて説得すれば、相手は分かってくれる」

「本当にやりたいことは命がけでやらなければ相手に通じない」は、中村清さんの教え。MGCを始めようとした時に反対意見があったが、強い思いで真心を込めて話したら分かってくれた

▽「我慢比べだと、日本選手に有利」

パリ五輪のマラソンコースはすごい坂があって、世界記録のペースでは走れない。また、暑いと速いタイムは出ない。日本女子の一番の期待は前田穂南選手で、暑いのも山坂も得意。一山麻緒選手は3年前の暑い札幌を走っており、経験も豊富だ

講師プロフィール

  • 瀬古 利彦  氏 (公財)日本陸上競技連盟・マラソンリーダー

    三重県生まれ。高校時代から本格的に陸上を始め、早稲田大学進学後、故中村清監督の下、ランナーとしての才能を開花。

    箱根駅伝では4年連続で「花の2区」を走り、3、4年次では区間新(当時)を獲得するなど、スーパーエースとして活躍。

    また大学時代からマラソンでも活躍し、国内外のマラソンで戦績15戦10勝。圧倒的な強さを誇る。

    現役引退後は指導者の道に進み、後進の育成に注力。現在、DeNAアスレティックスエリートアドバイザーを務める傍ら、日本陸連マラソンリーダーとして日本マラソンの強化活動を行っている。

  • 近藤 雄二 読売新聞社 編集委員(コーディネーター)