読売ビジネス・フォーラム(北海道)講演概要

「&マークの理念」と三井不動産の街づくり

菰田 正信  氏 三井不動産株式会社 代表取締役会長

開催日2025年5月20日 (火)
会場 札幌パークホテル(札幌市中央区南10西3)/正午〜

 三井不動産代表取締役会長の菰田正信氏(70)が、「『&(アンド)マークの理念』と三井不動産の街づくり」と題して、約150人を前に講演した。

 菰田氏は計1時間超にわたった講演の前半、同社のロゴでも使用している「&マーク」の経営理念を説明。「都市」と「自然」、「開発」と「保護」、「経済」と「文化」など、一見対立しそうな異なる概念について、どちらかを選ぶ「or(オア)」でなく「&」で共存、共生させて新たな価値を生み出すというものだと強調した。同社創立50周年の1991年に掲げ、「現在のサステナビリティー(持続可能性)やダイバーシティー(多様性)を言い表していて、先見性のある理念だ」と述べた。

 この理念を最も象徴的に体現しているとして、挙げたのが代表的プロジェクトである東京・日本橋の開発だ。基本概念は「残しながら」「蘇(よみがえ)らせながら」「創っていく」。江戸時代の情緒や歴史的建造物がありながら、ライフサイエンス(生命科学)や宇宙産業の企業が集積する「伝統と革新」の街になるとした。

 このほか、力説したのは、同社などが手がける大規模プロジェクト、東京・明治神宮外苑の再開発だ。多くの樹木を伐採する計画に批判の声が上がっているが、菰田氏は「(名所の)イチョウ並木は一本も伐採しない」と繰り返した。そして「大変な誤解がある。イチョウ以外の古い木を約600本伐採し、新しく約1000本植える」と述べ、「本当に守るべきは(神宮の)内苑の森。その費用を賄うため、外苑のスポーツ施設を整えて収益を上げていく」と説いた。

 講演の最後で、菰田氏は会場からの質問に答えた。地方創生への考え方を問われると、「東京対地方の対立構造はよくない。北海道なら札幌など、地方ごとに一極集中を図るべきだ」と持論を展開した。さらに「東京のミニチュア版ではダメで、それぞれの街の強みを生かした都市作りが大切」とし、米国の人口100万人以下の都市を成功例に挙げた。

 三井不動産や読売新聞グループ本社などが事業予定者に選ばれている東京・築地市場跡地の再開発にも触れ、「スタジアム、オフィス、住宅など全てが世界一になるようなミクストユース(複合用途)を考えていく」と展望を語った。

◆三井不動産・菰田会長の講演のポイント

◇ 「&マーク」の経営理念は、現在のサステナビリティー(持続可能性)やダイバーシティー(多様性)に通じる

◇ 東京・日本橋の街づくりの基本概念は「残しながら」「蘇らせながら」「創っていく」

◇ 明治神宮外苑の開発は「内苑」の森を守る費用を賄うため。外苑のイチョウ並木は一本も切らない

◇ 地方創生には、北海道なら札幌など、地方ごとの一極集中を図るべきだ。「東京のミニチュア版」の街づくりはいけない

講師プロフィール

  • 菰田 正信  氏 三井不動産株式会社 代表取締役会長

    1954年東京都生まれ。

    1978年東京大学法学部卒業後、三井不動産入社。2011年代表取締役社長 社長執行役員、2023年4月より現職。同年5月より不動産協会 会長、不動産証券化協会 会長、20246月より経団連 審議員会副議長、日本観光振興協会 会長。