読売ビジネス・フォーラム(北海道)講演概要

これからの経済・外交について

岸田 文雄  氏 衆議院議員 前内閣総理大臣

開催日2025年8月28日 (木)
会場 札幌グランドホテル(札幌市中央区北1条西4丁目)/正午〜

 岸田文雄前首相(68)が8月28日、「これからの経済・外交について」と題して講演した。北海道でのGX(グリーントランスフォーメーション)への投資推進や、参院選の結果を踏まえた自民党再生についても語った。

  岸田氏は経済政策について、首相時代に掲げた「新しい資本主義」による成長と分配の好循環が「(現政権下で)維持できるかどうかが大変重要な課題だ」とした。

 経済成長の典型例としてGXへの官民投資を挙げ、「北海道は『一丁目一番地』と言える位置づけにある」と強調。洋上風力発電の整備が可能になる「促進区域」に松前沖と檜山沖が指定されたことに「(洋上風力で)北海道が重要な役割を果たすことを期待している」と述べた。

 外交では「第2次世界大戦後、米国主導でつくり出された国際秩序を米国自身が否定するような動き」があるとし、米トランプ政権とは当面、「したたかに向き合う」現実的対応が必要だとした。東南アジアや欧州、アフリカ諸国とは「自由貿易」などを原則とする対応を提案。米国とその他の違いを「二面作戦」「ハイブリッド外交」と説明した。

 岸田氏は、20~22日に横浜市で開かれた「第9回アフリカ開発会議」(TICAD9)で議長代理を務めた。「各国の内戦などでアフリカが『暗黒の大陸』と言われていた頃に、いち早く支援の枠組みを作ったのが日本で、大きな先見性があった」とし、アフリカへの投資でさらに存在感を示すべきだと主張した。

 自民、公明の両党は衆参両院で過半数割れしており、「決められない政治」と言われている。岸田氏は「極めて残念」と語り、連立の組み替えや課題ごとの「部分連合」で野党の協力を得ながら政治を進めていくのが現実的な対応だとした。その一方で、「『迅速に決断できる政治』を取り戻す努力も続けなければならない」とも述べた。

 世界的に排他的な右派政党が台頭していることなどを念頭に、自民が「包摂的で穏健な保守政党」としての役割を果たさなければならないとした。

 

◆岸田前首相の主な発言

◇北海道は再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源を豊富に持ち、半導体企業「ラピダス」などのニーズに応えられる。まさにGXの「一丁目一番地」だ

 

◇日本は、米トランプ政権にはしたたかに向き合い、東南アジアや欧州、アフリカ諸国などと対応を使い分ける「ハイブリッド外交」で国益を守る必要がある

 

◇衆参両院で与党が過半数割れしており、連立の組み替えや課題ごとの「部分連合」で野党の協力を得ながら政治を進め、「迅速に決断できる政治」を取り戻す努力も続ける

 

◇世界的に排他的右派政党が台頭し、SNSの浸透で分断が加速している。自民党は「包摂的で穏健な保守政党」として、国民をつなぎとめる役割をはたさなければならない

講師プロフィール

  • 岸田 文雄  氏 衆議院議員 前内閣総理大臣

    1957年東京都出身。

    1982年早稲田大学法学部卒業後、日本長期信用銀行に入行。

    1993年衆議院議員初当選。2007年安倍改造内閣、福田内閣で内閣府特命担当大臣、2012年外務大臣、2017年防衛大臣(兼任)、自民党政務調査会長。2021年総裁選に勝利し、第27代自民党総裁に就任。

    100代・101代内閣総理大臣を務めた。