読売・TDBフォーラム北陸講演概要

世界経済の行方と金融市場動向

真壁 昭夫  氏 多摩大学特別招聘教授

開催日2023年9月7日 (木)
会場 オークスカナルパークホテル富山/13時30分~

多摩大特別招聘教授の真壁昭夫氏(69)は、日本経済の見通しについて「比較的明るい」と展望。過去30年ほぼ変わらなかった賃金水準が上昇していることなどを挙げ、「世の中の仕組みや環境がここにきて変わってきている」と指摘しました。

神奈川県出身の真壁氏は、一橋大卒業後に旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。ロンドン大院修了後、2005〜17年、信州大教授を務めました。著書に「行動経済学入門」(ダイヤモンド社)、「下流にならない生き方」(講談社)などがあります。

真壁氏は、日本経済の見通しが明るいことの理由として、半導体受託製造大手・台湾積体電路製造(TSMC)の工場(熊本県)、次世代半導体の国産化を目指す「ラピダス」の工場(北海道)など、半導体工場の相次ぐ建設を挙げました。「日本は半導体の部材や基板を作る能力や、世界市場での占有率が高い」と評価し、「世界最先端の半導体を量産化できれば日本経済は息を吹き返せる。今からならまだ間に合う。ここ2、3年が勝負だ」と強調しました。

アメリカ経済については、新型コロナウイルス対策として政府が支給した給付金の効果で個人消費が衰えず、好景気が続いていると分析。見通しについては、「個人消費の好調ぶりがいつまで続くか、政策金利の引き上げがいつ終わるかがポイント」とし、「個人消費は11〜12月で頭打ちとなり、金利の引き上げが11月に行われる確率は4割」と予測しました。

一方、中国経済については「景気先行きの不透明感は一段と上昇する」と指摘。1979年から2015年まで続いた「一人っ子政策」に伴い人口減少が進んでいることなどを原因として挙げ、「30年前の日本が今の中国。政策を間違えると、今より景気が悪くなる可能性は高い」と主張しました。

こうした状況を説明した上で、世界経済は全体としてなんとか景気を保っているとし、今後は減速することが確実だと、悲観的な見通しを示しました。

◆講演のポイント

▽日本経済の行方

底堅く推移する可能性が高い。ここ2、3年が勝負で、世界最先端の半導体を量産化できれば息を吹き返せる

▽世界経済の行方

世界全体としてなんとか保っているのが現状で、今後は間違いなく減速する

講師プロフィール

  • 真壁 昭夫  氏 多摩大学特別招聘教授

    1953年神奈川県生まれ。1976年一橋大学商学部卒業。同年、第一勧業銀行入行。1983年ロンドン大学経営学部大学院(修士)卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。

    2005年7月から2017年3月まで信州大学経済学部教授などを経て現在に至る。

    『行動経済学入門』(ダイヤモンド社)、『実践 行動ファイナンス入門』(アスキー新書)、『下流にならない生き方』(講談社)、『はじめての金融工学』(講談社現代新書)、『最強のファイナンス理論—心理学が解くマーケットの謎』(講談社)、『これからの年金・退職金がわかる本』(PHP)など、著書多数。