読売・TDBフォーラム北陸:講演概要
今後の金融行政の課題と方向性
栗田 照久 氏 金融庁長官
金融庁長官の栗田照久氏(60)は欧米中心に広がるインフレ(物価上昇)について触れ、「多くの中央銀行が金融政策を急速に引き締めた結果、世界経済の先行きの不確実性が高まっている」と懸念。その上で、国内では短期金利の操作を主な政策手段としていると説明し、「当面は緩和的な金融環境が継続していく」と述べました。
また、新型コロナウイルスの5類移行後の経済情勢や、能登半島地震における再生支援策などについて語りました。
5類移行を受け、栗田氏は「社会経済活動の正常化が進み本格的な経済回復と新たな経済成長の軌道に乗ることができる」と述べました。
一方で、原材料やエネルギーの価格の高騰、人手不足の影響を受け、厳しい状況にある事業者が出ている点を指摘。その上で「金融機関が各事業者の状況に応じた経営改善支援や事業再生支援を行っていくことが重要だ」と強調しました。
元日に発生した能登半島地震への金融庁の対応も紹介。被災者の生活となりわい支援策として、金融庁が主導し、「能登半島地震復興支援ファンド」を設立。ファンド総額は100億円で、甚大な被害に遭った輪島、珠洲市など石川県内6市町の事業者を継続的に支援していく構えです。有価証券報告書の提出期限を延長する特別措置なども講じたといいます。
栗田氏は「中長期の支援は地域経済の維持につながる」と力を込めていました。
講師プロフィール
-
栗田 照久 氏 金融庁長官
1963年、京都府出身。1987年京都大学法学部卒業。同年大蔵省(現・財務省)入省。
1992年仙台国税局白河税務署長、2003年米スタンフォード大学客員研究員を経て2009年金融庁監督局証券課長。2011年総務企画局企業開示課長。2013年監督局銀行第一課長を経て2014年総務企画局総務課長。2016年監督局参事官、2018年監督局長。2022年総合政策局長。2023年金融庁長官。