読売・TDBフォーラム北陸講演概要

これからの日本、戦後80年に学ぶべき教訓とは

保阪 正康  氏 ノンフィクション作家・評論家

開催日2025年5月22日 (木)
会場 ANAクラウンプラザホテル金沢/13:30~15:00

 昭和史に関する著作を多く持つノンフィクション作家の保阪正康氏(85)は「『昭和100年』にあたる今年は、歴史を改めて考え直す節目だ」とし、近代日本の戦争観や太平洋戦争などについて語りました。

 保阪氏は、日清戦争勃発(1894年)から太平洋戦争終結(1945年)にわたる、近代日本で起きた約50年間の対外戦争について「多くの問題点を抱えている」と分析。太平洋戦争で軍人らが昭和天皇へ虚偽の報告を続けていたという史実に触れ、「天皇を戦争の責任者にしてはいけなかった」と強調しました。「軍人たちの考え方と戦争政策の進め方が間違いだった」と指摘し、「歴史の中の英知や聡明な部分から教訓を引き出し、次の時代へ伝えていくことが大事だ」と力を込めました。

 江戸時代の武家政権下で天皇が政治と一線を引き、270年近く対外戦争が発生しなかったことを例示し、「天皇の役割は政治ではなく文化の中にあるべきだ」と主張しました。

 近代日本では、人の命に対する考え方が欠けていたとも指摘。講演の終盤で、太平洋戦争で命を落とした特攻隊員らの遺書を紹介し、「彼らが残した気持ちをくみ取り、遺志をつないでいきながら、歴史を学んでいく姿勢が大事だ」と語りました。

講師プロフィール

  • 保阪 正康  氏 ノンフィクション作家・評論家

    昭和14年(1939)12月、北海道札幌市生まれ。

    同志社大学文学部卒業後、出版社勤務などを経て、昭和47年に『死なう団事件』で作家デビュー、以後主に近現代史の事件、事象などの当事者を取材、あるいは発掘して作品化している。いわば実証主義的手法を用いて個人の心理、社会の動きなどを丹念に見つめる作家の系譜に入る。

    主な作品に『昭和陸軍の研究 』『あの戦争は何だったのか』『吉田茂』『田中角栄の昭和』『秩父宮』『東條英機と天皇の時代』『昭和史七つの謎』『ナショナリズムの昭和』(和辻哲郎賞)『石橋湛山の65日』(第一回石橋湛山和平賞)などがある。私家版『昭和史講座』の刊行と昭和史の研究で菊池寛賞を受賞。

    立教大学兼任講師、日本国際文化研究センター共同研究員など歴任、現在は「昭和史を語り継ぐ会」を主宰している。