読売広論セミナー大阪:講演概要
世界の大変容と政策対応
神田 眞人 氏 前財務省財務官
財務省の前財務官で、アジア開発銀行次期総裁の神田真人氏は1月10日、「世界の大変容と政策対応」をテーマに講演しました。
神田氏は「人類は歴史的な岐路にあるが、悲観する必要はない。より良い社会を作るチャンスでもある。リスクを取って戦えば無限に可能性は広がっている」と語りました。
神田氏は、ロシアのウクライナ侵略をはじめとする地政学リスクの高まりやインフレ(物価上昇)の進行に懸念を示しました。一方で、新興国を加えた主要20か国・地域(G20)などの枠組みの下で金融危機への対応が検討されていることに触れ、「世界の平和と繁栄を守る協調体制は進化している」と述べました。
神田氏は2021年から約3年間務めた財務官時代に、総額約25兆円に上る円買い・ドル売りの為替介入の実務を指揮しました。介入について「経済の実態とかけ離れた投機的な動きは是正していく必要がある」と意義を強調しました。
今後の為替相場の見通しについては「中長期的には(国の)競争力と為替は相関関係がある。日本が競争力を取り戻せば円の価値も上がるが、このままだと弱くなる」と危機感を示しました。
日本の人口減少が進む中、神田氏は「ほったらかすと日本が経済的に世界地図から消えてしまう。早く構造改革をやらないといけない」と指摘。賃上げを進め、労働市場を流動化していく必要があると訴えました。
講師プロフィール
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神田 眞人 氏 前財務省財務官
兵庫県出身。東京大法学部卒、オックスフォード大経済学修士。
1987年大蔵省(現財務省)入省。主計局次長、総括審議官、国際局長などを経て2021年7月から3年間、財務官を務めた。財務官在任中は為替介入の実務を指揮し、「令和のミスター円」の異名で知られる。G7やASEAN+3の議長も担当した。
現在は内閣官房参与、財務省顧問。OECDコーポレートガバナンス委員会の議長も8年間務める。2025年2月、アジア開発銀行総裁に就任する。