読売広論セミナー大阪:講演概要
米大統領選の結果を受けて
谷内 正太郎 氏 元国家安全保障局長
元国家安全保障局長の谷内正太郎氏は12月5日、「米大統領選の結果を受けて」と題して講演しました。
来年1月に発足する第2次トランプ政権について「戦後、米国が国際社会で担ってきた安全保障面などの負担に不公平感を持っている。日本により大きな犠牲を求めてくることは覚悟するべきだ」と述べました。
米大統領選では「米国第一主義」を掲げるトランプ氏が勝利し、上下両院とも共和党が多数を占める「トリプルレッド」が完成しました。
谷内氏は講演で、トランプ氏が各国からの輸入品に高い関税を課す考えを示していることに触れ、「世界貿易機関(WTO)の協定違反だ。法の支配やルールを守るべきだと言っていく必要がある」と強調しました。
ロシアのウクライナ侵略を巡っては、トランプ氏が戦闘の早期終結を公言してきたことを踏まえ、「米国が軍事的、経済的支援を停止すれば、ウクライナにとって大打撃だ」とし、北大西洋条約機構(NATO)の加盟諸国が支援を続けられるかどうかは疑問が残るとの見方を示しました。
日本の外交や安全保障については、「米国だけを頼りにする一本足打法から広角打法に変えていく必要がある」と指摘。「日米豪印の『クアッド』などマルチ外交を進め、積極的に世界平和に貢献していかなければならない」と話しました。
講師プロフィール
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谷内 正太郎 氏 元国家安全保障局長
富山県出身。東京大学大学院修士課程を修了後、1969年外務省入省。
条約局長や総合外交政策局長を歴任後、内閣官房副長官補として拉致問題などに取り組んだ。
外務事務次官を経て、2014年に初代の国家安全保障局長に就き、第二次安倍政権の外交・安全保障政策を支えた。
現在、富士通フューチャースタディーズ・センター理事長。