読売広論セミナー大阪:講演概要
日本経済の持続的成長に向けて-人口動態変化と企業の役割
翁 百合 氏 株式会社 日本総合研究所 シニアフェロー
日本総合研究所の翁百合シニアフェローが7月4日、「日本経済の持続的成長に向けて~人口動態変化と企業の役割」をテーマに講演しました。翁氏は「人口を大きく減らさない努力をしつつ、経済を強靱(きょうじん)化していくことが、日本のサステナビリティー(持続可能性)の根本となる」と語りました。
翁氏は社会保障や経済政策を専門としており、2024年から政府税制調査会(首相の諮問機関)の会長も務めています。
翁氏は、人口減少がこのまま進むとイノベーション(技術革新)に積極的な人材が減り、生産性が低下する恐れがあると指摘。子どもを増やすには、若い世代の就労環境を改善して所得を向上させることが不可欠とし、「女性も男性も仕事と家庭を両立するとともに、ライフステージに合わせて柔軟に働けるようにする必要がある」と述べました。
日本経済が低迷した「失われた30年」の間、企業がコストカットを重視し、国内の投資が増えなかったと分析。「経済を強靱化する戦略の背骨は『人への投資』。人件費はコストではなく、人的資本だ」と強調しました。翁氏は「付加価値の高いものを生み出し、稼ぐ力をつけていけば、人への投資ができて良い循環が回っていく。今はそのためのビジネスモデルを考えていくべき時代にある」と話しました。
講師プロフィール
-
翁 百合 氏 株式会社 日本総合研究所 シニアフェロー
東京都出身。慶応義塾大大学院修士課程修了。京都大博士(経済学)。1984年、日本銀行入行。国際局、営業局勤務などを経て92年に副主任研究員として日本総研に移り、2018年から2025年6月末まで日本総研理事長を務め、7月から現職。
専門は金融システム、社会保障、経済政策など。日本を代表するエコノミストの一人として、人口減少や円安、世界的なインフレといった激変する社会、経済環境への処方箋について、幅広い視点から提言を続けている。
24年1月、女性初の政府税制調査会会長に就任した。金融庁金融審議会、財務省財政制度等審議会、厚生労働省社会保障審議会でもそれぞれ委員を務める。