読売広論セミナー大阪講演概要

日本の有人宇宙活動

土井 隆雄  氏 宇宙飛行士

開催日2025年5月22日 (木)

 宇宙飛行士の土井隆雄・龍谷大客員教授が5月22日、「日本の有人宇宙活動」をテーマに講演しました。これまで日本人宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの建設や運用で実績を重ねた歴史を説明し、「日本の有人宇宙活動は成熟した」と強調しました。

 土井氏は1997年と2008年に米国のスペースシャトルに搭乗。97年の宇宙飛行では日本人初の船外活動に従事しました。この時、同僚の飛行士と通信で息を合わせながら、トラブルが起きた人工衛星を両手で回収した話を披露し、「人類は人工衛星を捕まえられるようになった」と振り返りました。

 また、飛行士のチームワークについて「宇宙では互いに命を預ける。訓練で1年半かけ、高い信頼関係を築いた」と語りました。

 2016年に京都大特定教授に着任し、「有人宇宙学」を教えました。人類が恒久的に宇宙へ進出するための学問で、「多くの人が生活し、仕事ができる社会を宇宙に作ることが必要だ」と述べました。

 講演では、自身が中心となって開発を進めた世界初の木造小型人工衛星が昨年、宇宙空間に放出されたことも紹介。「金属の人工衛星と違って大気圏突入時に環境を汚さない。木の文化がある日本は木材を使った人工衛星の開発を進めていくべきだ」と話しました。

講師プロフィール

  • 土井 隆雄  氏 宇宙飛行士

     東京都出身。東京大大学院修了。宇宙科学研究所研究生、米国航空宇宙局ルイス研究センター研究員などを経て、1997年にスペースシャトル・コロンビアに搭乗し、日本人宇宙飛行士として初めて船外で活動。2008年にはスペースシャトル・エンデバーに搭乗し、日本初の有人宇宙施設「きぼう」の整備を担当した。09年からは国連宇宙応用専門官としても活躍した。

     16年に京都大宇宙総合学研究ユニット特定教授、20年に同大学大学院総合生存学館特定教授。民間企業と共同で世界初の木造小型人工衛星の開発に取り組み、衛星は24年11月、米フロリダ州のケネディ宇宙センターからロケットで国際宇宙ステーションに打ち上げられた。