読売Bizフォーラム東北講演概要

「道を示すリーダーシップ
~不透明な時代の心構え~」

梨田 昌孝  氏 野球解説者

開催日2021年5月13日 (木)
会場 ウェスティンホテル仙台

 「逆転の発想をしていく。だめな部分があれば反対から見ればいい」。プロ野球の近鉄(現オリックス)、日本ハム、楽天の監督を歴任した梨田昌孝さん(67)は、豊富な指導経験を踏まえたリーダー論を語った。

 島根県出身、1972年にドラフト2位で近鉄に入団した。打つ時に肘を下げる癖を修正するため、あえて手の位置を下げてバットと両足をくねらせるユニークな「コンニャク打法」で知られる。捕手としてベストナインを3回、ゴールデングラブ賞を4回獲得している。

 2000年、初めて監督に就任した近鉄では、足でかき回す機動力野球を掲げた。だが、「ものの見事に梨田野球が大失敗」。その年は最下位に沈んだ。

 「近鉄の良さ、何だろう」。思いついたのが、「いてまえ打線」の言葉に代表される長打力だった。チームの防御率は5点に迫っていても、「5点取られたら7点、7点取られたら8点取れる」と超攻撃的な野球に転換し、就任2年目の01年シーズンはリーグ優勝を果たした。「会社でも、どこにも負けないことがあれば、そこを磨くのが大事だ」と強調した。

 昨年春に新型コロナウイルスに感染。重度の肺炎を患って不整脈の症状がみられ、重篤な状態が続いた。延期されていたプロ野球の開幕は6月19日。解説者として1か月前に退院しようと決めて、コロナを克服した。「目標を持つということが大事だと思う」と話した。

 今季のプロ野球でルーキーの活躍が目立っていることについて、「今は外出禁止令が出ていて飲みに誘われず、野球に集中できているのでは」と分析した。「楽天が非常に楽しみ」と、16年から18年シーズン途中まで監督を務めた古巣にもエールを送った。

 仙台市内で飲食店を展開する「サンワ・レストラン・クリエイツ」(青葉区)の大宮典平会長(74)は講演を聴いて、「逆転の発想で逆境を乗り越える考え方は、今のコロナ禍に求められるので参考になった。梨田さんの姿勢から学び、挑戦し続けたい」と話した。

講師プロフィール

  • 梨田 昌孝  氏 野球解説者

    1953年、島根県生まれ。72年に近鉄入団。強肩捕手として活躍する一方、独特の「コンニャク打法」で人気を博した。現役時代はベストナイン3回、ゴールデングラブ賞4回を受賞した。

    現役引退後は近鉄、日本ハム、楽天の監督を歴任、2013年にはWBC日本代表の野手総合コーチを務めるなど、指導力に定評がある。

    NHK解説者、日刊スポーツ野球評論家としても知られており、わが国を代表する野球人の一人。