読売Bizフォーラム東北:講演概要
河野 太郎 氏 デジタル大臣
9月6日、河野デジタル相が「デジタルが拓(ひら)く日本の未来」と題して講演した。河野氏は、デジタル化の推進によって教育や医療現場でも人材を集中的に再配置できると説明した。
マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」については、「二重投薬を防ぐなど医療費を適正化できる。個人名を伏せて(病気の)ビッグデータも集められる」と述べた。マイナンバー情報の総点検では「人間が介在している以上、ヒューマンエラーは必ず起きる。どこでリスクと利益を見切るかが政治の責任だ」と語った。
河野氏は、「過疎化や高齢化が進んでいる地域こそ、デジタル化で新しい技術革新やサービスが生まれ、世界に発信できる」と強調した。
「日本は人口減少、高齢化、過疎化と三つの課題に直面している」と指摘し、それを解決する手段の一つとしてデジタル化の推進を挙げた。マイナンバーカードを活用した住民票のコンビニ交付やオンライン診療などの導入で、人材の集中と選択ができ、「人と人が寄り添い、ぬくもりのある社会を作れる」とした。
「高齢化や過疎化という課題を乗り越えるサービスや技術を必要としているマーケットがそこにある」とも述べ、東北の可能性について言及。公共交通機関が維持できなくなった地域での自動運転車や、人手不足が深刻な物流業界でのドローン輸送などの例を挙げ、「デジタル化で、人間がやらなくていいものは任せていこうよ、ということができる。課題を逆手に取り、市場で切磋琢磨(せっさたくま)すれば、新しい技術、サービスにつながる。大都市より切羽詰まっている地域だからこそ挑戦できる」と強調した。
マイナカードと連携した宮城県独自の避難支援アプリにも触れ、「デジタル庁として、全国展開する後押しをすると同時に世界に向かって発信していきたい。東北の企業にも頑張っていただきたい」と呼びかけた。
一方、「行政のデジタル化のニーズに霞が関(中央省庁)が気付いていない」と指摘。新型コロナウイルスのワクチン接種事業で、国の管理システムを2か月で完成させた経験を振り返り、「様式やフォーマットは全国で統一し、政策はそれぞれの自治体が決める。地方分権すべきところと一緒にやった方が効率的なところの仕分けは確実にやっていかないといけない」と述べた。
講演を聞いたオフィス家具大手「オカムラ」の森勇一・仙台支店長(58)は「地方こそ率先してデジタル化を推し進めていく必要があると分かった。新サービスや仕組みづくりに挑戦したい」と述べた。建設業「東洋熱工業」の長嶋栄治・東北支店長(68)は「AI(人工知能)は仕事を奪うのでなく、助けるという点に感銘を受けた。建設業界は人手不足なので、早期にデジタル化する必要性を再認識した」と語った。
青森県三戸町の食品製造販売「太子食品工業」の工藤裕平副社長(40)は「マイナンバーカードを用いた医療のデジタル化が必要だと思った。世界に誇れるようなモデルを作ってほしい」と話した。
講師プロフィール
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河野 太郎 氏 デジタル大臣
1963年生まれ。85年12月米ジョージタウン大学卒業、民間企業勤務を経て96年10月、第41回衆院選で神奈川県15区から初当選。以来9期連続当選を重ねる。
法務副大臣、衆院外務委員長などを歴任し、15年10月、国務大臣、国家公安委員長、行政改革担当相、国家公務員制度担当、内閣府特命担当相。17年8月外相、19年9月防衛相、22年8月より現職。菅内閣では新型コロナウイルスワクチン担当として、接種加速の旗振り役を担った。
20年9月、行政改革担当相として全府省庁に印鑑使用の廃止を求め、デジタル相就任後は健康保険証のマイナンバーカード一本化を発表するなど、国レベルのDX化を強力に推進している。