読売Bizフォーラム東北:講演概要
青木 俊介 氏 チューリング株式会社 最高技術責任者
完全自動運転技術の開発を進めている「チューリング」(東京都)の青木俊介・最高技術責任者(34)が11月5日の講演で、実用化に向けた今後の展望を語りました。
青木氏は完全自動運転車両の実現には、複雑な道路事情に対応できるAI(人工知能)の活用が不可欠だなどと強調。2030年に量産を目指すとし、「需要が見込まれる技術であり、実装が進めば予想以上の社会変化が起きるはずだ」と述べました。
青木氏は川崎市出身。米カーネギーメロン大で博士号を取得後、「テスラを超える」と掲げ、2021年に代表取締役の山本一成氏とチューリングを設立しました。祖父は仙台市で印刷会社を創業するなど東北とも縁があります。
講演で青木氏は「12年頃に自動運転の領域に火が付き、近年は明らかに波が来ている」と指摘。従来の自動運転技術では変化する道路事情に対応できず限界を超えているとし、「これからはAIが考え、車を動かす世界になる」と予測しました。
同社では、カメラの映像を基にAIが車両を制御するシステムの開発を進めているといい、「センサーを使うよりコストを削減でき、開発者も多く認識技術の進化も速い」とメリットを紹介。東京都内で30分間、AIが自動運転する自社のプロジェクト「Tokyo30」を2025年までに実現するとし、「技術開発と同時に、自動運転が実現した社会を面白い形で示すことにも取り組みたい」と意欲を見せました。
「せっかく日本を飛び出してアメリカに行くんだったら、新しいことがしたい」と感じた時に自動運転技術と出会ったと振り返り、「エンジニアにとって社会をガラッと変えられることはそうないし、すごく面白い領域だ」と説明。「世界展開ができる車というハードウェアに搭載するソフトウェアを取りに行くことは、日本の産業全体から考えても非常に重要だ」と訴えました。
青木氏は、完全自動運転技術の開発をめぐる国際的な競争が激化しているとも強調しました。「人々の生活に関する情報や資金が海外に流れるのを防ぐため、国内でいいシステムを開発したい」と力を込めました。
参加した冠婚葬祭業の「あいあーる」(仙台市青葉区)の菊地隼社長(39)は「自動運転の進歩に驚いた。リスクなく安心して人やモノを運ぶ技術の発展に期待したい」と語りました。「金の井酒造」(栗原市)の三浦幹典社長(63)も「大変興味がある話だった。ぜひ実現し、ワクワクした未来を作り上げてほしい」と話しました。
講師プロフィール
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青木 俊介 氏 チューリング株式会社 最高技術責任者
1989年、神奈川県川崎市生まれ。
米・カーネギーメロン大学計算機工学科で博士号取得。米国で自動運転車の開発・研究に従事し、サイバー信号機の開発や大手自動車会社の自動運転システムの開発に携わる。
2021年より国立情報学研究所助教として青木研究室を主宰。名古屋大学 特任准教授を兼任。
21年8月、将棋AI「ポナンザ」を開発した山本一成氏と、完全自動運転のEV(電気自動車)を開発するチューリング株式会社を共同創業。取締役最高技術責任者(CTO)として技術部門を統括。人工知能による完全自動運転システムの実現を目指す。