読売Bizフォーラム東北:講演概要
ふるさと東北への想(おも)い~地方創生が拓(ひら)く未来
菅 義偉 氏 第99代内閣総理大臣
5月27日、読売新聞の創刊150年を記念し、菅前首相が「ふるさと東北への想(おも)い~地方創生が拓(ひら)く未来」と題して特別講演を行った。
菅氏は、総務相在任時にふるさと納税制度の創設を主導したことに触れ、「地方の創意工夫で物事を変えられる仕組みをつくりたかった。ふるさと納税はうまく回っていると思う」と語った。
地方創生については「自由に使えるお金が必要で、ふるさと納税はそのための制度。皆さんが知恵を出してくれれば色んなことができる」と強調。ふるさと納税の活用事例も挙げ、「挑戦していくことが大事だ」と述べた。
菅前首相は「東北には大きな可能性がある」と強調した。
冒頭、菅氏は「第2次安倍政権を作った時、仙台で降りて安倍さんに電話をして(総裁選)出馬への決意を強く求めたことを思い浮かべながらこの場所に立っている」と安倍元首相との思い出を披露。その上で、自身が首相として取り組んだ携帯電話料金の引き下げや不妊治療の保険適用、コロナ禍のワクチン接種などの実績を振り返った。
総務相在任時に創設を提唱したふるさと納税制度については「自分を育ててくれた古里に何らかの形で貢献したいとみんなが思っているに違いないと思った」と強い思い入れがあったことを明かし、「地方が創意工夫をすることで、物事を変えられる仕組みを作りたかった」と語った。
また、「国民の大きな期待は半導体にある」と指摘し、首相在任時に「国が先頭に立って政策を進めることを閣議決定し、半導体誘致に多くの資金をつぎ込めるようにした」と説明。九州の半導体生産が地元経済に大きな影響を与えていることを紹介した上で、半導体の生産拠点として岩手県北上市や宮城県大衡村で雇用促進や人材育成などの準備が進んでいるとし、「東北は『ミスター半導体』と呼ばれた東北大の西沢(潤ー)先生が牽引(けんいん)し、最先端の研究が世界から注目されていた。(受け入れ)準備ができている地域。投資と人材育成の両輪が進むことを大いに期待している」と述べた。
地方創生については、出身地である秋田県の工芸品「まげわっぱ」がふるさと納税で人気になったことや、九州のウナギ店がコロナ禍でも工夫して売り上げを伸ばした事例を挙げ、「挑戦していくことが大事だ」と強調した。
参加したクリスロード商店街振興組合(青葉区)の松坂信理事長(56)は「政策を実現されてきた行動力に感銘を受けた。私たちも団結して、新しい風を起こしていかないといけない」と語った。東急リバブル東北支店の木村考支店長(58)も「私自身、毎年ふるさと納税を活用している。この仕組みを活用して、我々の手で地方を活性化させていきたい」と話した。
講師プロフィール
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菅 義偉 氏 第99代内閣総理大臣
1948年、秋田県雄勝郡秋ノ宮村(現・湯沢市)生まれ。
高校卒業後、集団就職で上京し、会社員や議員秘書、横浜市議などを経て、96年衆議院選挙で神奈川2区から出馬し、初当選。
総務大臣や官房長官を経て、2020年9月に第99代総理大臣に就任した。
在任中の1年間は新型コロナウイルス禍の真っただ中で、緊急事態宣言が3度も発令された。
「ふるさと納税」の生みの親として知られるが、制度提唱の背景には農家の長男に生まれたのに家業を継がなかったことで、故郷に何か還元したいとの思いがあったという。
座右の銘は「意志有れば道在り」。