読売Bizフォーラム東京
講演要旨

報道記録から展望する「新型コロナウイルス感染症」

舘田 一博 氏東邦大学医学部教授・日本感染症学会監事

笹沢 教一 読売新聞東京本社 調査研究本部 主任研究員

開催日2021年7月13日 (火)
  •  日本感染症学会監事で東邦大教授の舘田一博さん(感染症学)は「今回のパンデミック(大流行)も、必ず乗り越えられる。反省を生かし、感染症に強い社会を築き上げる必要がある」と語りました。
     新型コロナの対応を時系列でまとめた「報道記録 新型コロナウイルス感染症」(読売新聞社、2200円税込み)の発売に合わせて企画されました。編集に携わった読売新聞東京本社調査研究本部の笹沢教一・主任研究員が舘田さんに聞く形で、感染拡大が続いた1年半を振り返りました。
     コメディアンの志村けんさんが新型コロナに感染して亡くなり、緊急事態宣言が発令された昨年3~4月について、当時、専門家の一人として宣言を了承する立場にあった舘田さんは「一番緊張した瞬間だった」と述べました。「志村さんが亡くなったという報道の衝撃は大きかった。初の緊急事態宣言を出すべきかどうか議論があったが、医療現場から『もたない』という悲鳴が上がり、社会に警戒を促すために出された」と語りました。
     同8月の日本感染症学会の学術講演会の冒頭あいさつで、同学会理事長を務めていた舘田さんは「まさに今、『第2波』のまっただ中にいる」との見解を示しました。政府が「第2波」とみなすことに消極的な姿勢を示す中での発言で、大きく報道されましたが、「感染者が春に続いて増えており、第2波と考えるのが妥当だった」と振り返りました。
     今後の収束の見通しについては、「変異ウイルスの登場もあって見通せないが、ワクチン接種が進むと、10月、11月にはある程度見えてくるのではないか」と指摘。その上で、「感染症は国家の危機管理だ。平時から、感染症専門医を育成するとともに、いざという時にワクチンをすぐに作れる態勢を取っておくことが重要だ。日本にはそれをサポートする仕組みがなかった。今回の反省を生かし、次のパンデミックに備えなければならない」と語りました。

講師プロフィール

  • 舘田 一博  氏 東邦大学医学部教授・日本感染症学会監事

    1985年長崎大学医学部卒。90年東邦大学医学部微生物学教室助手、95年同講師。

    99年スイス・ジュネーブ大学、2000年米国・ミシガン大学呼吸器内科に留学。

    01年東邦大学に復職、11年微生物・感染症学講座教授。

    日本感染症学会監事、新型コロナウイルス感染症対策分科会委員を務める。

  • 笹沢 教一   読売新聞東京本社 調査研究本部 主任研究員

    科学部、欧米特派員、編集委員を経験。ジュネーブ時代にWHOを担当した。