読売Bizフォーラム東京
講演概要

縮小する「文化」概念―「社会の分母」をどう広げるか?

山田 奨治  氏 国際日本文化研究センター 教授/総合研究大学院大学 教授

佐野 真由子  氏 京都大学大学院教育学研究科 教授

開催日2024年10月10日 (木)

「文化」って何?「文化を守る」「文化の創出」「〇〇は日本の文化だ」。よくこのような言い方を聞きますが、何を「文化」と言っているのでしょうか?「文明」と「文化」の違いは何でしょうか?

本講座では、このように様々に捉えられる「文化」を、その変遷を踏まえ、現代の日本における位置づけや広がりを取り戻すための「政策」について、文化交流史を専門とする国際日本文化研究センターの山田奨治・教授が紹介します。また、講座の後半では、京都大学大学院教育学研究科(文化政策学)の佐野真由子・教授との対談を通して「新しい文化政策プロジェクト」の提言を紹介します。

開催概要

タイトル  日文研×読売Bizフォーラム東京

      縮小する「文化」概念――「社会の分母」をどう広げるか?

講  師  山田 奨治氏(国際日本文化研究センター 教授/総合研究大学院大学 教授)

      佐野 真由子氏(京都大学大学院教育学研究科 教授)

司  会  関水 誠  (読売調査研究機構)

開催日時  2024年10月10日(木)19時~20時30分

開催方法  オンライン配信(YouTubeライブ)

内  容  (1)山田 奨治氏による講演

      (2)山田 奨治氏と佐野 真由子氏による対談

      (3)Q&A

受講料    無料

申込方法   こちらから

定員    500名(定員に達し次第締め切ります)

申込締切   10月7日(月)

受講方法   前日までに視聴方法をメールでお送りします

主  催   国際日本文化研究センター(日文研)、(一社)読売調査研究機構

後  援   読売新聞社

 

講師による講演内容の紹介

山田 奨治(やまだ・しょうじ)氏

「文化」という言葉が、世にあふれています。「文化の活用」「文化産業」「文化観光」などなど……。「文化」は「culture」の訳語として明治のはじめに定着しました。その後「文化」と「文明」の語は、日本語でも外国語でも意味内容が混同されて使われてきました。

「文化」は元来、特定の社会集団に特徴的な生活様式や価値観をも含む、人間活動の総合的な概念だと考えられています。それが大正期にドイツの「Kultur」概念の影響を受けて「国民の固有性」の意味合いが強くなります。そして、終戦後の日本は「文化国家」の道を歩むことを宣言しました。

それ以後の日本の「文化」概念は、一方で狭義の「文化芸術」を意味するものに収斂し、他方で「文化産業」のコンテンツを指すようにもなりました。またゼロ年代後半からはインバウンドを意識した「文化観光」のために「活用」するものにもなっています。

講演者は、こうした歴史をへて「文化」概念が縮小してきたと感じています。「文化」の広がりを取り戻すための「政策」について、最後に考えます。

佐野 真由子(さの・まゆこ)氏

〝現代の日本において「文化政策」論と称されるものが、あまりにも小さくなってしまってはいないか? たとえばアーティストの支援、文化財の保護などに関する制度の改変や、制度利用のノウハウ、また「文化予算」の多寡をめぐる議論ばかりが中心になってしまってはいないか?……〟2023年3月に〈新しい文化政策プロジェクト〉が公表した提言「社会の分子ではなく、分母としての文化政策」の冒頭部分です。

このような問題意識を、年々強く持つようになっていました。「文化政策」を広く捉え直したい……私たちの生き方そのものにかかわる、社会づくり、国づくりの問題として……と謳い、〈プロジェクト〉を立ち上げたのが2019年。山田先生にはその当初からご参加いただき、いまも一緒に活動を続けています。

ご講演を受けて、私からは〈プロジェクト〉の紹介を中心に、その背景にある歴史研究にも触れながら、「文化政策」の矮小化について論点を提示できればと思います。

 

講師プロフィール

  • 山田 奨治  氏 国際日本文化研究センター 教授/総合研究大学院大学 教授

    筑波大学大学院修士課程医科学研究科修了。企業勤務、筑波技術短期大学助手をへて1996年に国際日本文化研究センター助教授。2011年より現職。京都大学博士(工学)。専門は情報学と文化交流史。著書に『〈海賊版〉の思想』『著作権は文化を発展させるのか』『東京ブギウギと鈴木大拙』『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』『禅という名の日本丸』『日本文化の模倣と創造』など。

  • 佐野 真由子  氏 京都大学大学院教育学研究科 教授

    ケンブリッジ大学国際関係論専攻MPhil課程修了、東京大学博士(学術)。国際交流基金、UNESCO勤務ののち、静岡文化芸術大学、国際日本文化研究センター等を経て2018年より現職。単・共著に、『万博学―万国博覧会という、世界を把握する方法』(2020)、『幕末外交儀礼の研究―欧米外交官たちの将軍拝謁』(2016)、Pour une histoire des politiques culturelles dans le monde (2011)など。