YIES(読売国際経済懇話会):講演概要
[第389回講演会] 「習近平中国」をどう理解すればよいか?
垂 秀夫 氏 第16代駐中国日本国特命全権大使
読売国際経済懇話会(YIES)は4月7日、講演会を開いた。今回から、一般社団法人読売調査研究機構に運営が移管され、読売新聞社は後援とする形式となった。講師は第16代駐中国日本国特命全権大使の垂秀夫氏。「中国外交にとっては、トランプ米大統領が出てきて、米国と日本、欧州などとの関係にひびが入ると、極めて都合がいい」と指摘した。
習近平(シー・ジンピン)国家主席について、垂氏は「アヘン戦争以降の屈辱の歴史に報復する気持ちを持つ力の信奉者だ」と評した。従来の指導者とは異なり、経済成長より幅広い分野での「国家の安全」を優先するという、習氏体制の中国の内政と外交の特徴を述べた。
台湾情勢についても時間を割いた。武力侵攻は中国にとって代償が大きいとし、認知戦などによって台湾が自ら倒れることが狙いだと解説。「台湾に集中する世界の最先端半導体技術が無傷で中国に渡ったら、宇宙、兵器、人工知能(AI)の開発でゲームチェンジが起きるだろう」と訴えた。
米トランプ政権が「相互関税」を打ち出し、中国が対抗措置を発表するなど、貿易摩擦が激化するさなかの開催とあって、注目度の高い講演会となった。法人会員や各国大使館員ら約90人の参加者が、垂氏の熱弁に聞き入っていた。
講師プロフィール
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垂 秀夫 氏 第16代駐中国日本国特命全権大使
1961年 大阪府生まれ
1985年 京都大学法学部卒業後 外務省入省
1995年 駐中華人民共和国大使館一等書記官
1999年 駐香港日本国総領事館領事
2008年 アジア大洋州局中国・モンゴル課長
2011年 駐中華人民共和国日本国大使館公使
2015年 大臣官房審議官(アジア大洋州局)
2016年 (公財)交流協会台北事務所
2019年 大臣官房長
2020年から23年12月まで駐中華人民共和国特命全権大使
外務省退官後 2024年から立命館大学教授 慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授を務める