読売・TDBフォーラム北陸:講演概要
女性活躍社会の促進に向けて
村木 厚子 氏 全国社会福祉協議会会長
元厚生労働次官で全国社会福祉協議会会長の村木厚子氏(69)は、女性を含めた全ての人が働きやすい環境づくりの意義や、具体的なヒントについて語りました。
村木氏は、働き手確保や企業の生産性向上の観点から、人口の半分を占める女性が能力を発揮できる環境整備の重要性を訴えました。また、早朝に勤務できる制度を導入した企業の例などを紹介し、「様々な人が使いやすい『お互いさま』の制度になるよう工夫した組織はうまくいく」と語りました。
村木氏は、女性が働きやすい国では出生率も高いことをデータを用いて説明。「家事・育児負担が大きい女性が活躍できる職場は、男性や高齢者も働きやすい職場だ」と指摘し、働き方改革は社会や企業の成長に欠かせないとしました。
その上で、女性ら従来組織にいなかった人材「ニューカマー」が「既存の仕事の仕方を見直すきっかけになる」と評価。新たな価値観を持つ人と協力して目標達成を目指す過程で、業務の効率化が進むとし、女性活躍に取り組み企業は「しばらくして業績が上がる」と述べました。
一方、人は無意識に差別する傾向があるという研究結果を紹介。オーディションの際に面接官と応募者の間にカーテンを設置して以降、女性や有色人種の奏者が増えた海外オーケストラの事例を挙げ、「採用や昇級を考える際は、無意識の差別があることを前提に、工夫してほしい」と呼びかけました。
講師プロフィール
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村木 厚子 氏 全国社会福祉協議会会長
1955年高知県生まれ。高知大学卒業。1978年労働省(現・厚生労働省)入省。障害者政策、女性政策などを担当。
2009年、郵便不正事件で逮捕・起訴されるも2010年、無罪が確定し、復職。2013年、厚生労働事務次官。2015年退官。
困難を抱える若い女性を支える「若草プロジェクト」代表呼びかけ人。累犯障害者を支援する「共生社会を創る愛の基金」顧問。全国社会福祉協議会会長。
著書に「日本型組織の病を考える」(角川新書)、「私は負けない『郵便不正事件』はこうして作られた」(中央公論新社)などがある。