読売広論セミナー大阪:講演概要
あなたとともに「未来」をつくるために
浅川 智恵子 氏 日本科学未来館館長 IBMフェロー
日本科学未来館館長で全盲の技術者、浅川智恵子さんが3月25日、「あなたとともに『未来』をつくるために」をテーマに講演しました。中学生の時に失明したハンデを乗り越え、女性技術者の先駆けとして取り組む最新の研究活動を紹介。「日常生活の質はテクノロジーによって向上している」と語り、2025年大阪・関西万博は「ダイバーシティー(多様性)を生かした日本発のイノベーション(技術革新)を起こす大きなチャンスになる」と期待を寄せました。
大阪府出身の浅川さんは大学卒業後にプログラミングを学び、日本IBMに入社。ホームページの情報を音声で読み上げるソフトなど、障害者を支える機器やサービスを開発しました。09年には日本人女性で初めて、IBM技術者の最高職位である「IBMフェロー」に就任しました。
講演では動画を交え、技術革新の歴史などを説明。電話の発明や音声合成・認識技術の進歩は「障害者という少数派のニーズが始まりとなり、イノベーションにつながった」と話しました。
現在研究中のプロジェクトとして、搭載した人工知能(AI)やセンサーが周囲の状況を認識しながら、視覚障害者を道案内するスーツケース型ロボットの実験風景も紹介。「きらりと光る日本発のイノベーションの種を見つけて、人や街、社会、地球全てのスケールで未来をつくるきっかけにしたい」と夢を語りました。
講師プロフィール
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浅川 智恵子 氏 日本科学未来館館長 IBMフェロー
小学生時代のけがが原因で、中学2年で失明した。
追手門学院大を卒業後、1985年日本IBM東京基礎研究所入社。97年にホームページ読み上げソフト「ホームページリーダー」を開発した。
2004年東京大大学院博士課程修了。09年に日本人女性で初めてIBM技術者の最高職位、IBMフェローに就いた。19年全米発明家殿堂入り。21年4月から日本科学未来館館長。
大阪府出身。63歳。